Challenge Stories
~私たちが未来のためにできること~

~起業支援を起源に、アントレプレナーシップ教育の展開へ~
2024.04.16公開

関西学院がめざすアントレプレナーシップ教育と起業支援vol.01

関西学院大学では、2016年秋より「IPOアントレプレナー100⼈創出プロジェクト」を掲げ、アントレプレナーシップ教育と起業支援に取り組んでいます。第1回目は、関西学院のアントレプレナーシップ教育の始まりについて、また正課授業「ベンチャービジネス創成」について意見を交わしました。

  • 国際学部 教授
    木本 圭一

    研究分野は、人文・社会/会計学。2014年から2016年まで社会連携センター長、2017年より社会連携コーディネーター(現在まで)を務める。関西学院のアントレプレナーシップ教育の立ち上げから関わり、現在は「ベンチャービジネス創成」を担当。

  • 研究推進社会連携機構 社会連携・インキュベーション推進センター
    佐野 芳枝

    関西学院大学経済学部卒業。金融機関の法人営業など、複数企業を経て入職。関西学院のアントレプレナーシップ教育全体のコーディネート、各種プログラムの企画運営を担当。正課授業の院内講師も務める。

  • 卒業生・講師
    松本 修平

    関西学院大学商学部卒業。慶應義塾大学特任助教(2024年6月より名古屋大学特任准教授)。幼少期から関学卒業までに複数事業を創業。監査法人トーマツ等を経て、現在は京都大学大学院博士課程にて起業家教育の研究に従事。関学では正課授業に加え、起業を志す学生へのフォロープログラムを担当。

  • 卒業生・起業家
    濱田 祐太

    関西学院大学法学部卒業。株式会社ローカルフラッグ代表取締役社長。学生時代に「イノベーションと起業家精神」を受講。在学中に起業し、京都府与謝野町で地域資源を生かしたクラフトビール事業等を展開。Kwansei Gakuin STARTUP ACADEMYメンター。ベンチャー新月会にも所属。

  • 社会起業学科 3年生・起業家
    小菅 優衣

    関西学院大学人間福祉学部社会起業学科3年生。株式会社Bestieat代表取締役。1年生の夏より関西学院のアントレプレナーシップ教育関連プログラムを複数受講。並行して神戸にあるパン屋のロスパンを2次流通させる事業「あすぱん」をはじめ、2023年11月に法人化する。

関西学院では、2039年を見据えた超長期ビジョンと長期戦略からなる将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」(KGC2039)を策定しています。本学院のありたい姿を描き、それを実現していくためには、教職員をはじめ、本学院関係者の強い繋がりが不可欠です。そこで、KGC2039で掲げる長期戦略から抽出したテーマをもとに、部署や業務、立場を越えて語り合う場を創出することで、相互理解を促し、想いを共有します。


 将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」についてはこちら


関西学院大学では、2016年秋より「IPOアントレプレナー100⼈創出プロジェクト」を掲げ、本学出⾝の上場起業家を2039年までに100⼈輩出することを目標にアントレプレナーシップ教育と起業支援に取り組んでいます。今回、これらの教育と支援に取り組む教職員及び卒業生講師、さらに起業家として活躍する在学生・卒業生に参加してもらい、関西学院の起業家育成の取組状況や特長、今後の課題について意見を交わしました。5回に分けてお届けします。

関西学院のアントレプレナーシップ教育の歴史


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木本 本学における起業家支援の起源としては、2004年に池田銀行と連携協定を結び、現役学生・卒業生への出資や貸付の仕組みを導入したのが最初です(現在は本協定に基づく出資や貸付の仕組みは解消されています)。 ビジネスプランコンテスト(現・Kwansei Gakuin PITCH CONTEST)も開催し、実際に起業家への出資や貸付を行う中で、起業へつながるシーズづくりが必要だと感じるようになりました。そこで、現役学生から育成していくためにアントレプレナーシップ教育を考えることになり、正課授業として、「ベンチャービジネス創成」の前身授業科目である「イノベーションと起業家精神」を開設。さらに実践的なプログラムである「Kwansei Gakuin STARTUP ACADEMY」をスタートさせました。現役学生にとってこれらの教育プログラムは、実際に起業せずとも将来に有益な知識・スキルを培う場になるという確信があったので、大学として取り組んできたという流れです。




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佐野 池田銀行と連携協定を結んだ当時は、ビジネスプランコンテストからシーズを探し出す動きが社会的に出始めた頃で、「大学発ベンチャー」という言葉もほぼないような状況でした。そこでまずは広報も兼ねて、イベントを開催して広く知ってもらうことから始めました。その後、教育プログラムにも徐々に力を入れるようになりました。


教育プログラムの導入にあたり、木本先生にも参画いただいた研究会で議論を重ねました。そこでは、関西学院の卒業生にIPOInitial Public Offering、新規上場株式)社長や起業家の方々が多くいらっしゃるのに、当時は大学との接点がほとんどなかったので、どのように接点をつくり、教育プログラムに関与いただくか、また、起業に至るまでの道筋を、どう学生たちに知ってもらうかといった話があがりました。結論として、IPO社長や起業家として活躍する卒業生による授業を提供することになりました。単位取得ができる正課授業として開講することで、起業への興味の有無にかかわらずより多くの学生が学べるようにという期待も込めて、2016年度から、授業「イノベーションと起業家精神」がスタートしました。









木本 学生にとってはどうしても遠い存在に感じてしまうIPO社長や起業家の方々ですが、卒業生だということで身近に感じられ、ロールモデルにもしやすくなります。たくさんの卒業生の方々とつながれることは、本学ならではの強みですね。


佐野 2016年度から始まって丸8年。濱田さんのように、本学でアントレプレナーシップ教育を受けて起業家になる卒業生が増えてきました。卒業後のつながりを築くため、「ベンチャー新月会」という同窓会団体を立ち上げました。この団体にはもちろんIPO社長にも入っていただいているので、相談もできますし、卒業生のコミュニティ形成にも役立っていると思います。



ベンチャービジネス創成NUC岡本社長.JPEG濱田 関学の卒業生は母校が好きな人が多く、かつ事業をしているという共通項があるので、「若い人を応援していこう、後輩を応援したい」というモチベーションを持って、ベンチャー新月会にも関わってくださっている先輩経営者がたくさんいらっしゃいます。自分はまだ若い方なので先輩方から助けてもらう側ですが、関学生で起業を志す後輩を応援する一定の仕組みは整ったように思います。そこには恩送りというかペイフォワードの精神を感じます。













「Kwansei Gakuin STARTUP ACADEMY」の参加者の声は、以下の動画内から




IPO社長たちの生の声を聞く、「ベンチャービジネス創成」


木本 「ベンチャービジネス創成」の授業は全14回で、そのうちIPO社長のご講演を78回、残りが受講生のグループワークによるビジネスプラン作成です。最近では基礎理論の解説などはオンデマンド教材で予習してもらい、かつ教員からのアドバイスもクラウド上でやりとりするなどオンラインを活用しており、対面授業では、生の声を聞くことや、受講生同士の対話を重視しています。


ビジネスプラン作成に際して、単に理論や制度だけを学んで取り組むのではなく、関学の先輩であるIPO社長から実際に起業する際の体験談や想いを聞き、それをロールモデルとしてプラン作成に取り組むところが、この授業の最大の特長です。先輩たちの生の声は、学生がビジネスプランを作成する際の示唆やモチベーションにつながっていると思います。


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濱田 私のその授業の前身である「イノベーションと起業家精神」を学生時代に受講しましたが、かなり面白い授業だったと記憶しています。毎週、経営者の先輩方が登壇してくださり、学生時代や、起業から今に至るまでの話を聞かせてくださいました。先輩方の大胆な体験談を通じて、「リスクを取って、チャレンジしたから結果が出ているんだな」ということがわかり、チャレンジし続けることが起業をする上で一番大事なのではないかと強く感じました。講師のひとりでいらっしゃる真田哲弥社長(KLab株式会社 取締役会長 ファウンダー/株式会社BLOCKSMITH&Co. 代表取締役社長 CEO)のお話は、億単位の借金をしてそれを返すなど破天荒すぎるのですが、起業の醍醐味や面白さを教えてもらえましたし、そういう生き方が世の中を変える可能性を生むのだと気づかせてもらえました。「アントレプレナーシップを持ってチャレンジする生き方ってかっこいいな」と、つくづく思いました。





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小菅 インターネットで関学卒の社長の情報を調べても、上場されてからの事業業績や現在の会社紹介がメインで、「すごいなぁ」って感じて、それで終わってしまうんです(笑)。でも、授業だとそんなすごい方々が関学生だった時、どのように過ごしていたかということもお聞きできる。現役で学んでいる身としては、「自分と同じ年の時、こんな感じやったんや」というお話がとても興味深く面白かったです。私自身が事業を始めた頃は迷いもあったのですが、先輩たちの破天荒なお話を聞いて勇気をもらい、「このままでいいんや」と背中を押されました。










木本 濱田さん、小菅さんのお話を聞いて、やはり先輩方の経験や思いを生で聞くというのが第一義であると改めて思いました。講師を担ってくださるIPO社長は関学が大好きで、後輩のためにという思いを強く持って協力してくださっています。学生時代から起業、IPOに至るまでの経緯をじっくりお話いただく機会は、他ではあまりないでしょうし、リアルな本音トークは、学生に強く伝わります。さらに、意欲のある学生とはSNSを通じて連絡してくださっている方もおられます。IPO社長に直接SNSでつながれるなんて、なかなかできることではりませんが「受講生ならいいよ」と。学生にとってはとても貴重な機会になっていると思います。


対談 (4).JPG濱田 私も学生の頃、実際にとある社長の授業を受けた後、SNSで連絡して会社に伺ったことがあります。また、当時は授業後に「社長を囲む会」をして質問をしていました。今もありますか?


佐野 今もありますよ。授業を少し早めに終えて、その教室に残って話すというスタイルです。


木本 毎回10人ぐらいの学生たちが残っていますよね。すごくいい取り組みだと思います。


Matsumoto1.jpg松本 社長たちから直接話を聞くことで、「ここまでやっていいんだ」ということを、頭で考えるのではなく、存在そのものを見て、学生のみなさんは理解し、勇気づけられているんですね。お話を聞いて、あらためて取り組みの意義を感じました。


私は、神戸三田キャンパスにおいて「ベンチャーシーズ論」という授業を担当しており、約12名の理工系学部の先生方に登壇いただいています。前半は4050分で様々な専門領域の解説をしていただき、後半はそれらをシーズと捉えて事業計画を練ります。毎回、私が妄想したビジネスプランを、会社名まで作って、5年、10年でこのように事業展開できるんじゃないかということを解説しています。大学にはシーズがたくさん眠っていますので、今後はこういったものをしっかり掘り起こしていくフェーズに入っていくのではないかと考えています。



社会連携・インキュベーション推進センターHP


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Vol.2 ~起業実践プログラム「Kwansei Gakuin STARTUP ACADEMY」の魅力~へ