ICT(情報通信技術)の急激な発展で第4次産業革命と称される変化が進行しています。
身の回りの様々な製品・部品にセンサーが埋め込まれ、さまざまな事象をデータ化して自動的に収集し、インターネットを通じてクラウド上のコンピュータに蓄積するIoT(モノのインターネット)。そのビッグデータを解析することで新たなサービスや製品を創造していきます。その過程で、機械学習、深層学習(ディープラーニング)といった技術革新によって飛躍的に進化したAI(人工知能)が活用されます。
こうした大きな意味でのデジタル化、自動化はあらゆる産業のあらゆる工程で急速に進むと考えられており、当然ながら産業構造、人材需要にも大きな変化が起きようとしています。自動運転車、フィンテック(FinTech)、オーダーメイド治療、Uber等のシェアリングエコノミーなど新たなビジネス分野が開拓されるにしたがって、データサイエンスやAIに関する知識・技能をもった人材の不足が繰り返し指摘されるようになってきました。
こうしたICTの技術革新は、雇用や労働市場に大きな影響をもたらすことが確実視されています。オックスフォード大のオズボーン博士らによって、日本や米国でこれから10-20年の間に5割近い仕事がAIに代替される可能性がある、という衝撃的な研究結果が出されました。その後の研究で、職業そのものはなくならないが、肉体労働も事務業務も定型的な作業(task)はロボットやソフト、AIが代替していくことは避けられません。同時にAIが補完することで人間がすること(できること)が拡張するという視点もあります。
さて、そのような時代に人間しかできないこと・人間がすべきことは何かといえば、人間同士の高度で複雑なコミュニケーションを必要とすることや、新たな何かを創り出すクリエイティブな要素を含んだものということになると予測されます。
これらの技術革新と、グローバリゼーション、ロボット化、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などが複合的に絡み合い、将来の労働市場は二極化すると予想する識者は少なくありません。表現を変えれば、中間層が大幅に減少する、ということです。
では、そのような時代にあっても本学の学生が社会で活躍していくために必要な知識・能力・資質とはどのようなものか、それを関西学院は園児・児童・生徒・学生にどのように身につけさせていくのか。これが「Kwansei Grand Challenge 2039」の中心的な命題です。
「AIによる雇用への影響」
野村総合研究所 ニュースリリース(2015年12月2日)
「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」
https://www.nri.com/jp/news/2015/151202_1.aspx
「人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊」
井上 智洋著 文藝春秋(2017年6月)
人生100年時代構想会議 第1回 リンダ・グラットン議員 提出資料
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/jinsei100nen/dai1/siryou.html
日本経済新聞 2017年11月7,8日付け
「AIの雇用への影響を考える(2)-雇用激減、多くの研究が否定的」
「AIの雇用への影響を考える(3)-労働者に必要な能力が変化」
岩本晃一 経済産業研究所上席研究員、波多野文 高知工科大学客員研究員 筆