Challenge Stories
~私たちが未来のためにできること~

~関西学院大学のキャリア支援の強みと課題~
2023.02.15公開

「一人ひとりに寄り添う」関西学院大学のキャリア支援 vol.01

キャリアセンターでの業務を経験している職員たちが、その強みと課題を導入に、関西学院のキャリア支援の新たな取り組みや、めざす姿について意見交換を行いました。

  • 西宮上ケ原・梅田キャンパス キャリアセンター
    犬伏 宏樹

    中学部から関西学院で学び、大学卒業後、10年間テレビ局で報道記者などを経験。2020年に入職し、キャリアセンターの学生支援グループに配属。キャリアガイダンスや企業招聘イベントなどの企画、KGキャリアチャンネル運営などを担当。

  • 経済学部事務室
    小山 藍

    2008年に新卒で入職し、国際教育・協力センターを経て、2014年からキャリアセンターで、キャリア教育担当、調査分析グループで進路調査等を経験し、キャリア教育プログラムの再構築、キャリアガイダンスなどの企画・運営を担う。在籍時に産休・育休も取得。2022年4月より現職。

  • 西宮上ケ原キャンパス キャリアセンター
    石橋 將広

    本学卒業後、2010年に新卒で入職し、人間福祉学部事務室に配属。2017年に、教務機構に異動となり、ラーニングコモンズ、ライティングセンターの設置、業務効率化推進PJ定期試験PJリーダーなどを担う。2022年4月より現職。キャリア教育を担当。

  • 西宮上ケ原キャンパス キャリアセンター
    村田 晋作

    出版社で約10年間、教科書編集を経験。2019年に入職し、キャリアセンターに配属。調査分析企業連携グループで、キャリアセンター広報、キャリア支援システム運用管理、データ収集・分析などを担い、キャリア支援のDX化にも尽力。

  • 神戸三田キャンパス キャリアセンター
    國頭 貫也

    関西の経済団体で11年間勤務し、2013年に入職。国際教育・協力センターで留学プログラムの開発、外国人留学生の受け入れ業務等を担当。2022年4月より現職。主に理系学生と外国人留学生等のキャリア・就職支援を担当。

関西学院では、2039年を見据えた超長期ビジョンと長期戦略からなる将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」(KGC2039)を策定しています。
本学院のありたい姿を描き、それを実現していくためには、教職員の強いつながりが不可欠です。
そこで、KGC2039で掲げる長期戦略から抽出したテーマをもとに、部署や業務を横断して語り合う場を創出することで、教職員間の相互理解を促し、想いを共有します。

将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」についてはこちら

今回は、長期戦略テーマ『「質の高い就労 ― 学生が自ら希望する最適な就職・進路へ踏み出す」の実現』に取り組むキャリアセンターの5名の現・元職員に参加してもらい、「関西学院大学のキャリア支援」をテーマに座談会を開催しました。コロナ禍や価値観の多様化など、キャリア支援を取り巻く環境が大きく変化しています。学生たちのキャリア観の変化をはじめ、学生たちに寄り添う新たな取り組み、日々の業務へのやりがいや想い、さらにはありたい姿についてなど、職員たちの本音のトークを4回に分けてお届けします。




大規模大学でありながらも一人ひとりに寄り添う、関学のキャリア支援



犬伏:関学のキャリア支援の強みは何かと聞かれたら、学生自身が納得して答えを導き出せるように指導しているところです。焦りや不安を抱えて就活をしている学生に対して、目の前の選択肢だけではなく視野を広げるための気づきを与えられるように心掛けています。キャリアセンターでは、個人面談は年間3万件近く実施していますが、一人ひとりに寄り添いながら、こういった支援ができていることは誇れるのではないでしょうか。

村田:関学に限ったことではないのですが、就職、進学、留学など、卒業後の選択肢が年々多様になってきており、ここ5年は就職の割合が減り、就職先の業種も多様化する傾向にあります。大規模大学では、一斉ガイダンスなどマス向けの支援が中心だと思いますが、関学では学生数が多い状況でもできる限り個別の対応を行っていることが特徴であり強みです。進路把握を担当する我々のチームでも、学生一人ひとりが何に困っているかキャッチアップし、それを支援チームにつなぎ、イベント企画の見直しや個別対応を後押ししています。


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小山:進路把握率の高さも関学キャリアセンターの強みですよね。内定を獲得していても別の業界を志望しているケースだってありますし、キャリアセンターにどんな支援を希望するかといったことも進路把握のアンケートや電話から聞き取ることを心がけています。進路把握から得た情報を活かし、例年通りではなく「学生がこのようなことに困っているから、このような支援企画を実施しよう」と、期中であっても変えられる部分は変えていく。大学の規模とは裏腹に、柔軟で細やかな対応を心掛けています。


犬伏:現状を知り、状況に合わせて支援の方法を変化させていく面は確かにありますね。例えば今年度は春学期の早い段階での内定率が昨年に比べて低かったので、各キャンパスの支援拠点から情報を集め、連携しながらイベントのてこ入れをしていきました。これができるのも我々だけではなく、教員や他部署の方々の協力があるからです。特に理系学部では、教員と学生の距離の近さが支援を充実させることにつながっていると感じます。


國頭:おっしゃるとおりです。理系学部が集まる神戸三田キャンパスは、センターと先生方との距離が近く、就職支援はもちろん、学校推薦制度や各種キャリア形成支援プログラムについても先生方と連携して改善を重ねています。教育・研究が中心であるという共通認識のうえで、先生方からは「就職も大事である」という良き理解と協力をいただけています。毎月、理系学部の先生方とは、センターが取り組んでいる就職支援の状況や課題を報告し、先生方からの意見をいただきながら、目線合わせの場を持っています。國頭②.jpg


石橋:私の感じる関学のキャリア支援の強みは、卒業後に後輩のサポートをしたいという先輩の声がかなり多いということです。毎週土曜日にオンラインの先輩訪問会を企画・開催していますが、協力を依頼するとほとんどの卒業生が快諾してくれます。社会人の先輩とのつながりが濃く、支援に協力的であることは、現役学生にとって大きな価値になります。キャリア教育の企画運営にも関学卒の企業の方々が関わってくれており、良い化学反応が起きています。元々関学は母校愛が強い大学ですが、その理由も「在学中のキャリア支援によって満足できるキャリアを歩めているから」という要素が大きいのではないかと感じています。


村田:卒業生や在学生のメンタリティに起因して、「関学だからできる」ことも結構ありますよね。職員も関学が好きな人が多く、献身性が高いと感じます。これにはスクールモットー"Mastery for Service"の精神も関係していると思います。さらに私を含め、関学が母校でない人も、関学がすごく好きだという特長があるんです。母校ではない私から見てもその良さが感じられる。そこも関学の魅力だと思いますし、キャリア支援にも活きていると思います。
関西学院のスクールモットー"Mastery for Service"についてはこちら


小山:学生時代にキャリアセンターを利用していなかった卒業生が、「協力したい」と、わざわざ電話をくださることがあります。私は他大学出身ですが、母校にそこまで愛校心を感じたことがないので、本当にすごいなと感服していました。関学のキリスト教主義教育も関連しているのだと思います。小山②.jpg

コロナ禍や変化の激しい時代におけるキャリア支援の課題


犬伏:キャリア支援を取り巻く環境が大きく変化しています。オンラインによる外部企業・団体の就職支援サービスが増えてきている中で、大学のキャリアセンターがどういう立ち位置を示すのかが、ここ数年求められているように感じています。今までの強みであった個別支援に、さらにプラスαで何かを見いだす必要があります。
就活の開始時期も早期化しています。以前は、業界研究やES(エントリーシート)作成なども3年次の秋頃から本格始動していましたが、昨今は夏のインターンシップの参加に向けて春学期から前倒して取り組む傾向にあります。一方で、秋冬から就活を始める学生もいるので、年間を通じてガイダンスや講座を提供できる体制を整えておく必要があります。そのため現在は、1年1サイクルの支援ではなく、学生の就活開始時期の多様化にも対応したスモールマスでの支援を重視しています。その分、労力はかかってしまいますが、年間を通じて必要なサポートが受けられることも、学生たちから求められている部分です。犬伏④.jpg


村田:従来、キャリアセンターによる活動の成果は、例えばこのイベントに何人参加したとか、何件対応したとか、数で明確に出ていましたよね。ほとんどの学生が就職志望であり、進みたい業界の傾向もあったので、求められている情報を提供すれば多くの学生が受け取ってくれ、その数が多ければ良いという価値観で展開してきました。しかし昨今は、就活の開始時期も、外部サービスも、企業も、学生も多様化しており、「何ができればキャリアセンターの存在価値を学生に示すことができ、実質的な支援の提供になるのか」という根本的な部分を考え直す時期がきていると感じます。


犬伏:コロナ前は対面で3,000人の学生が参加していたキャリアガイダンスをオンライン化したところ、参加者が極端に減少しました。学生のニーズを把握・分析し、離れてしまった学生たちを戻そうと努力を続け、最近やっと以前の対面参加の規模にまで戻り、次のステップを検討・展開するところまできたと思っています。
コロナ禍でしばらくオンライン授業が続き、キャンパスにあまり入れずに過ごしてきた学生は、学内でのつながりが希薄化しています。「窓口に来て相談できるだけでうれしい」と話す学生もいました。我々にできることは、オンラインで知識を教えるだけではなく、やはりコミュニティとして、関学のリアルキャンパスにおける就職支援です。同じような境遇、考え方をもった関学生同士を集め、つながりをつくって学び合う環境を提供することは、外部にはできません。関学だからこそできることを突き詰めていかなければいけないと感じています。きほんシリーズの様子①.jpeg



石橋:キャリア教育とキャリア支援を、どのようにして繋げていくのかも課題です。キャリア教育は、2022年度からキャリアセンターが担当しています。その一環で、「KGキャリア入門」というオンライン科目を新たに開講したのですが、1年生を中心に年間で1.1万人が履修する、これまで類を見ない規模の科目となりました。1年生においては、全学生の75%にあたる4,500人ほどの履修があり、この実数を見ても、1年生からキャリアを意識していることが見て取れます。就職活動の早期化も踏まえ、いかに1~2年生でキャリアや人生に対する考え方の土台を作り、3~4年生のキャリア支援へ繋げられるかが鍵になると考えています。キャリア教育とキャリア支援をワンストップでセットにできるように、現在、キャリア教育のプログラムを運営しています。
KGキャリア入門.jpg2022年度から新規開講されたフルオンデマンド科目「KGキャリア入門」



小山:多くの学生が履修するキャリア教育科目で、低年次からキャリア観を醸成していくことができれば、キャリアガイダンス等の就活支援イベントへの参加者も増えるかもしれません。キャリアガイダンスの内容はキャリアセンターメンバーで練りに練って、学生に必ず役立つと部署全員が納得できるものを常に目指して実施してきましたが、全学生には聴いてもらえないという点が昔からの課題でした。キャリア教育とキャリア支援の連携は、この課題の解決にもつながるように思います。


國頭:就職支援が留学生に十分に行き渡っていないことも課題だと思います。関学は文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援」事業に選ばれ、学生の海外派遣や外国人留学生の受け入れを積極的に行っています。(詳細はこちらSGU.jpg留学生たちも日本人学生と同様に就職支援を受けられますが、第二言語としての日本語による就職活動は留学生にとって特殊なものです。日本の就活は3年次からスタートするのが一般的ですが、海外はそうではなく、卒業後に就職先を探す慣例の国もあります。そもそも入学して2年後に就職活動に取り組む必要があることを知らない留学生も多くいます。私も学生時代に留学を経験しましたが、海外では現地の生活になじむこと、授業についていくことで精一杯でした。そのため留学生たちは、「就活」なんて頭の隅にもないのが実情だと思います。また、日本で就活をする場合、日本語能力試験のN1レベルは当然のこと、ビジネス日本語や、日本企業におけるビジネスの慣習を学ばなければいけません。そのような情報が圧倒的に不足している留学生たちを、入口だけでなく出口の部分までしっかり支援しなければいけないと個人的には考えています。



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