Challenge Stories
~私たちが未来のためにできること~

~キャリア支援のやりがい、ありたい姿~
2023.03.08公開

「一人ひとりに寄り添う」関西学院大学のキャリア支援 vol.04

関西学院大学のキャリア支援は、学生たちが卒業後に「真に豊かな人生」を実現するための支援ともいえます。ラストとなる第4回目は、日々の業務へのやりがいや職場環境、さらにはキャリアセンターや自身のありたい姿について、それぞれの想いを語ってもらいました。

  • 西宮上ケ原・梅田キャンパス キャリアセンター
    犬伏 宏樹

    中学部から関西学院で学び、大学卒業後、10年間テレビ局で報道記者などを経験。2020年に入職し、キャリアセンターの学生支援グループに配属。キャリアガイダンスや企業招聘イベントなどの企画、KGキャリアチャンネル運営などを担当。

  • 経済学部事務室
    小山 藍

    2008年に新卒で入職し、国際教育・協力センターを経て、2014年からキャリアセンターで、キャリア教育担当、調査分析グループで進路調査等を経験し、キャリア教育プログラムの再構築、キャリアガイダンスなどの企画・運営を担う。在籍時に産休・育休も取得。2022年4月より現職。

  • 西宮上ケ原キャンパス キャリアセンター
    石橋 將広

    本学卒業後、2010年に新卒で入職し、人間福祉学部事務室に配属。2017年に、教務機構に異動となり、ラーニングコモンズ、ライティングセンターの設置、業務効率化推進PJ定期試験PJリーダーなどを担う。2022年4月より現職。キャリア教育を担当。

  • 西宮上ケ原キャンパス キャリアセンター
    村田 晋作

    出版社で約10年間、教科書編集を経験。2019年に入職し、キャリアセンターに配属。調査分析企業連携グループで、キャリアセンター広報、キャリア支援システム運用管理、データ収集・分析などを担い、キャリア支援のDX化にも尽力。

  • 神戸三田キャンパス キャリアセンター
    國頭 貫也

    関西の経済団体で11年間勤務し、2013年に入職。国際教育・協力センターで留学プログラムの開発、外国人留学生の受け入れ業務等を担当。2022年4月より現職。主に理系学生と外国人留学生等のキャリア・就職支援を担当。

将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」(KGC2039)の実現には、教職員たちの強いつながりが不可欠です。
KGC2039で掲げる長期戦略から抽出したテーマをもとに、部署や業務を横断して語り合う場を創出することで、教職員間の相互理解を促し、想いを共有します。


将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」についてはこちら


今回は、長期戦略テーマ『「質の高い就労 ― 学生が自ら希望する最適な就職・進路へ踏み出す」の実現』に取り組むキャリアセンターの5名の現・元職員参加のもと、「関西学院のキャリア支援」をテーマに座談会を開催しましたので、その内容を4回に分けてお届けします。


『「一人ひとりに寄り添う」関西学院大学のキャリア支援 vol.03』はこちら



最終的に学生の成長や満足につながることが、日々の業務のやりがいに


 犬伏:学生への支援に取り組む中で、学生が満足している顔を直接見られたとき、学生のモチベーションが上がったと感じられるときは、とてもやりがいを感じます。また、キャリアセンターは、西宮上ケ原、神戸三田、西宮聖和、大阪梅田の4キャンパスに拠点があり、週に1回オンラインでの打ち合せがあるものの、なかなか直接顔を合わせる機会がありません。そういった中、大規模のキャリアガイダンスの実施に向けては、全員で知恵を絞って内容を考え、当日の運営を含めて、全員で力を合わせて取り組みます。お祭り的な要素もあり、その一体感には強くやりがいを感じることができます。対面でのキャリアガイダンスの様子①.JPG


小山:職員主導で取り組む機会が多いことも、キャリアセンターで働くやりがいにつながっていると思います。事前に固定されたスケジュールに縛られず、社会情勢や学生の状況の変化を踏まえ、柔軟にガイダンスなどイベント内容を組み替えたり、新たな企画を展開したりと、職員自らが課題をとらえチャレンジできます。


犬伏:キャリア教育・支援を通じて学生のキャリア観を醸成し、最後は本人が満足した進路につなげられるように取り組んでいますが、学生によって悩みや課題は千差万別ですので、日々同じ業務を行うわけではありません。その中で自分に求められている役割を考え、各チームとのつながりを感じながら学生ファーストで前向きな議論ができることころは、キャリアセンターの特長だと思います。


石橋:キャリア教育のオンデマンド授業「KGキャリア入門」を創出し、正課授業として開講できたことは、まさに職員が主体的にチャレンジした成果の一例だと思います。私は、この授業の運営を担当していますが、想定をはるかに超える履修者がいたことで、システムへのアクセス集中などによるトラブルが複数発生しました。これらトラブルを部署の垣根を越えた協力・連携によって解決することができ、次年度の授業改善にも携わることができました。大きな自信になり、やりがいも感じています。それに、相談できる先輩や刺激を与えてくれる後輩などの存在は大きいなと、この経験からあらためて感じました。石橋①候補.jpg


小山:一方で、落ち込むようなこともあるんですよね。例えば、「他大学ではCAのメイク講座があるのに関学はやってくれない」とか、保証人との相談会で掘り下げた質問から学生の取組状況を確認しようとしても、「具体的なアドバイスをしてほしい」と言われたり、全然こちらの意図が伝わらないこともあります。キャリア教育・支援はその後の学生の将来につながるもので、スティーブ・ジョブズの「点と点が線でつながる」に近い話で、あとから振り返って「あのときあの人が言っていたのは、こういう意味だったのか」と思ってもらえる日が来ると信じていますが、その刹那のタイミングでは点でしかないので、実はお叱りを受けることが多い部署でもあります。


村田:キャリアセンターが注力する進路把握という業務は、個々の学生に卒業後の進路を確認する仕事ですが、なかなか答えてくれない学生もいて、何度か電話をかけ続けると、たまに怒鳴られることもあります。それでも、進路把握を通じて、就職活動に行き詰まり、今後の進路で本当に困っている学生からのSOSを引き出すことは、重要な責務だと感じています。どうすれば前よりいい結果になるかという、創意工夫を楽しむようなメンタリティも大事ですね。それが自身のモチベーションに直接つながりますので、どんな業務に取り組むうえでも意識しています。


國頭:職員として学生に質の高いサービスを提供していくためには、個々の能力開発が不可欠だと思っています。キャリアセンターであれば職員一人ひとりがしっかりとしたキャリア観、自律的なキャリアを歩んでいることが必要であり、そのうえで個々の継続的なスキルアップが欠かせないと考えています。もともと前職で研修企画の仕事をしていたので、積極的に研修の受講や能力開発に取り組んできました。現在も所属部署内での研修や勉強会を企画させてもらうことがあります。それは個人の能力開発を高めるとともに、やがて組織力向上にもつながっていくと信じています。能力開発が質の高い学生サービスを可能にし、学生の喜びが自らのものとなり、ひいては自身のモチベーションを高く保つことにも役立っています。國頭③.jpg


村田:社会情勢や企業動向を含め、就職環境は変化が激しいので、そのキャッチアップ自体が重要ということもあり、キャリアセンターではセミナー・研修への参加が推奨されていますよね。ここ最近だと、國頭さんが、ご自身が参加したDX関連の研修の講師を、関学にお招きして勉強会を開催してくれました。そこで得た情報のおかげで、自分の中のモヤモヤが解消され、具体的なDXの提案につなげることができました。


國頭:キャリアセンターは学び続ける組織なので、すごく刺激になっています。大学卒業後、約20年仕事をしてきて今が一番面白く、ついつい仕事をしすぎてしまうくらいです(笑)。部署のメンバーがすごく勉強熱心で上長も後押ししてくださり、組織として情報をアップデートしようとしている姿勢・風土が素晴らしいと思います。

高いモチベーションが保てるのも、余裕をもてる職場環境があってこそ


村田:そもそも研修に参加したり、新しい提案ができたりするのは、それぞれの職員に時間的にも精神的にも余裕があるということです。定時以降もルーチンワークに追われ、毎日3~4時間も残業があるとしたら、新しい試みや研修参加の意欲が湧きませんよね。キャリアセンターも、以前から今のように余裕のある働き方ができていたわけではないと聞いています。この数年間の段階的な業務改革のおかげで、職員が新しいことに取り組む時間を持てています。


小山:たとえば、以前はFAXで届く求人票を手打ちでシステムに入力して公開していたのですが、外部システムを導入し、企業側に情報を登録してもらって、ある一定の条件を設定しておけば自動公開される仕組みに変えました。また、個人面談の実施体制や記録作成の改善工夫も進められています。小山①候補.jpg


村田:業務をコンパクトに収めていく工夫で、これだけ変わるんだなというのが驚きでした。


小山:私も産休育休から復帰した際に職場環境が激変していたのでビックリしました。以前は業務が年々肥大化していて、自転車操業のようにガイダンス等のイベントを開催する感覚でしたが、無理無駄を省き、一回一回に力を入れるように転換され、常に工夫・改善しながら業務を企画・実施するようになっていました。


村田:今は環境が整い、業務時間内に新しいことを提案する機会も設けられていますので、一つひとつの業務をコンパクトにまとめたり、スクラップする勇気をもったりもできます。ただ、こういうことはトップダウンでないとなかなか浸透しません。「提案していいよ」と言われても、考える余裕がない環境の部署では難しい。組織としてうまく機能しているから連鎖的に動くものであり、どれか一つだけ変えてもうまくいかないと思います。今のキャリアセンターが完璧だとは思いませんが、少なくとも我々が日々の業務にやりがいを感じながら、精神的に余裕がある環境で学生支援に集中できているのは、これまでの先輩方の成果であり、より良い職場環境をつくるためのエコシステムができているからなのかなと思います。4年生による後輩相談会②.jpg
内定を獲得した4年生のSR(Student Reporters)による後輩支援イベント


國頭:新しいものを生み出すには労力をかける必要がありますが、常に忙しい状況では無理が生じて、学生のために質を高めていくこともできませんからね。神戸三田キャンパスでも理系学生の学校推薦応募や「BiZCLASS」などの新たな取り組みが開始され、業務時間も増えていますが、確かな成果を感じられています。長期的には落ち着く見込みなので、「今ここで頑張れば」という高い意欲で取り組めています。


村田:キャリア支援のDXも、「こういうことができたら学生にこんなメリットがあるんじゃないか」と自分なりに構想をつくり、部署内で提案・議論して進めています。このようなことは、どの部署でもできるはずですが、中には難しいと思っている若手の職員もいるじゃないでしょうか。しかし職員として「何かを変える、動かす」という意識で仕事をすれば、その工夫により結構できるものだと若い職員のみなさんに伝えたいです。実際にキャリアセンターにはその風土があり、同じような風土の部署が増えつつあると思います。


犬伏:先ほどお話した「"きほん"シリーズ」や「知るカフェ」との連携も、上長からの指示ではないですからね。イベントに学生が来ないという課題を全員で考える中で、「次はこれをやってみよう」と新たな取り組みを画策しています。大きなことばかりではありませんが、昨年やったことを踏襲するのではなく、一つひとつ、一人ひとりが考えて進めていくところはキャリアセンターの良いところですね。対面の学内セミナー(看板).jpeg
改善を重ねながら各種イベントを開催


小山:コロナ禍になった2020年度以降に入学した世代の就職活動を考える段階では、私もまだキャリアセンターに所属していましたが、一部の就活ガイダンスは社会状況に合わせて内容を変更しました。過去にも、リーマンショックや東日本大震災に対応するために臨時イベントを企画・実施したと聞いています。キャリアセンターには、学生の現状に合わせて何かをやろうという文化がずっとあるように思います。


石橋:キャリア教育のオンデマンド授業も、こういった職員組織だったからこそ実現できたのかなとも感じます。実はキャリア教育を正課授業にできている大学は、あまり多くないんです。でも、授業とイベントでは学生に伝わるものも変わってくると思います。



最後まで寄り添い続け、学生たちが「真に豊かな人生」を送れる力に


犬伏:外部の就職支援サービスがすごく増えてきていますが、あくまでビジネスとして営利目的でやっておられるので、利害関係の中に学生が巻き込まれることに危惧しています。就職活動において、最後までフラットな目線で学生に寄り添うことができるのは、本人のご家族と大学のキャリアセンターぐらいではないでしょうか。学生を気持ちよくさせる短期視点での意見ではなく、フラットな目線で、学生のためにどういう言葉をかけるべきか、時には心を鬼にしてでも言える立場であり続けなければいけないと考えています。犬伏③.jpg


村田:究極的にはキャリアセンターが真に必要とされない状態が理想だと思います。学生が主体的に考えて行動し、自分に必要な情報を自身でキャッチして企業にアプライしていけば、就職活動は一人でできるものだからです。全員がそうであればキャリアセンターの支援は不要です。しかし、現実問題として全員がそのような状態にはなり得ません。では、大学のキャリアセンターの価値って何だろうと考えると、外部の就職支援サービスと違って、「絶対に撤退しないこと」です。どんな外部サービスも「学生のために」と謳いますが、事業として行う以上、採算がとれない場合は撤退します。しかし我々は利用者が少なかったとしても、学生のニーズを模索しながら、常に高いサービス、品質で提供し続けるところが最大の強みであり、あるべき姿だと思います。


小山:前センター長が「働く覚悟をもちなさい」というメッセージをよく学生に送っていました。働く覚悟を持つためには自分で決断する経験が大切です。「親に言われたので入社しました」では、嫌なことがあれば親のせいにしてしまいます。しかし、自分の決断には責任を持たざるを得ません。キャリアセンターは、この決断の後押しをする組織であると思っています。


石橋:私たちが社会人のロールモデルの一つとして、キャリアセンターでやりがいを持っていきいきと働いていないと、そのことは学生に伝わってしまうし、良い取り組みはできないと思っています。キャリアセンターは幸いにも、企業の方々や学生との接点が多く、成長する機会や刺激を多く与えてもらえる部署です。自分に何ができるかを考えながら主体的に働きかけ、さらに良い組織に成長させていきたいです。


村田:私が個人的に関学の何が好きかというと、KGC2039の超長期ビジョンで「強さと品位を兼ね備えた世界市民を育成する」と謳っているところです。「品位」を前面に出している大学や組織はあまりなく、品位の高い人材を輩出するんだという考え方は、ここで働く大きなモチベーションになっています。私自身も品の良い大人になりたいですし、キャリアセンターも品位の高い場でありたいと思います。村田②.jpg


國頭:産業構造も複雑化している社会の中で、我々が変化にどう対応できるか、キャリアセンターの力が試されている部分があると思います。就職活動の支援のみに限定されるのではなく、入る前からその後のキャリアまで、学生がキャリア自律を成し遂げられるように支援しなければなりません。そのためには、点ではなくて線、あるいは面の支援が必要です。本学のキャリアセンターが担うべき役割は、本当に重要だと思います。
本学の中期総合経営計画が掲げる「真に豊かな人生」は、職業人生だけでなく、私生活も含めた社会的役割や心身の健康等、人生のすべての領域にわたるものだと思っています。目標達成に向けて困難を乗り越える力を持つことも、真に豊かな人生を送るうえで必要なのではないでしょうか。その力を学生たちに持たせられるよう、寄り添い続けたいですね。



関西学院大学の就職・キャリア支援についてはこちら


将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」についてはこちら



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