Challenge Stories
~私たちが未来のためにできること~

~学生たちに寄り添う新たな取り組み~
2023.03.01公開

「一人ひとりに寄り添う」関西学院大学のキャリア支援 vol.03

コロナ禍を受け、キャリア支援も大きな変革を余儀なくされました。しかしそのことで、多様化する学生のニーズに応える企画も次々に産み出されてきています。第3回目は、学生たちに寄り添う新たな取り組みについて紹介してもらいました。

  • 西宮上ケ原・梅田キャンパス キャリアセンター
    犬伏 宏樹

    中学部から関西学院で学び、大学卒業後、10年間テレビ局で報道記者などを経験。2020年に入職し、キャリアセンターの学生支援グループに配属。キャリアガイダンスや企業招聘イベントなどの企画、KGキャリアチャンネル運営などを担当。

  • 経済学部事務室
    小山 藍

    2008年に新卒で入職し、国際教育・協力センターを経て、2014年からキャリアセンターで、キャリア教育担当、調査分析グループで進路調査等を経験し、キャリア教育プログラムの再構築、キャリアガイダンスなどの企画・運営を担う。在籍時に産休・育休も取得。2022年4月より現職。

  • 西宮上ケ原キャンパス キャリアセンター
    石橋 將広

    本学卒業後、2010年に新卒で入職し、人間福祉学部事務室に配属。2017年に、教務機構に異動となり、ラーニングコモンズ、ライティングセンターの設置、業務効率化推進PJ定期試験PJリーダーなどを担う。2022年4月より現職。キャリア教育を担当。

  • 西宮上ケ原キャンパス キャリアセンター
    村田 晋作

    出版社で約10年間、教科書編集を経験。2019年に入職し、キャリアセンターに配属。調査分析企業連携グループで、キャリアセンター広報、キャリア支援システム運用管理、データ収集・分析などを担い、キャリア支援のDX化にも尽力。

  • 神戸三田キャンパス キャリアセンター
    國頭 貫也

    関西の経済団体で11年間勤務し、2013年に入職。国際教育・協力センターで留学プログラムの開発、外国人留学生の受け入れ業務等を担当。2022年4月より現職。主に理系学生と外国人留学生等のキャリア・就職支援を担当。

将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」(KGC2039)の実現には、教職員たちの強いつながりが不可欠です。KGC2039で掲げる長期戦略から抽出したテーマをもとに、部署や業務を横断して語り合う場を創出することで、教職員間の相互理解を促し、想いを共有します。


将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」についてはこちら


今回は、長期戦略テーマ『「質の高い就労 ― 学生が自ら希望する最適な就職・進路へ踏み出す」の実現』に取り組むキャリアセンターの5名の現・元職員参加のもと、「関西学院のキャリア支援」をテーマに座談会を開催しましたので、その内容を4回に分けてお届けします。


『「一人ひとりに寄り添う」関西学院大学のキャリア支援 vol.02』はこちら



就活のイロハから教える企画や出張相談会、DXなどで学生のニーズに対応


犬伏:近年、キャリアセンターでは、さまざまな取り組みを新たに始めていて、今年度新たに立ち上げたものだと、「"きほん"シリーズ」があります。従来は、大人数の学生を集めてマス的に就職活動のイロハをレクチャーするセミナーを主体に実施してきましたが、ニーズの多様化、就職活動の開始時期の分散、さらには外部の就職支援サービスの増加などの状況を踏まえ、あらためて大学としてできるサポートは何なのかを突き詰めて考えていきました。
原点に立ち返って、不安感の強い学生に伴走できるようなものをつくろうと、この「"きほん"シリーズ」を企画しました。コロナ禍で学生間での情報共有・収集が困難で、初めての就活で不安感の強い学生も増える中、マスの支援と個の支援の間の部分、小規模で演習も交えたセミナーにより学生間のコミュニケーションも促す支援企画です。従来は自走を促してきた領域の支援も始めたわけです。このサポートを経た学生を、個の支援である個別相談に引き込むという流れもつくれればと考えています。
きほんシリーズの様子②.jpeg
「"きほん"シリーズ」の様子


小山:規模や内容を縮小させ、よりなだらかにきめ細かく支援することで、個の行動につなげていこうとする新たな仕掛けですね。


犬伏:そうですね。個人面談などでよく質問される内容を「"きほん"シリーズ」のテーマにすることで、より学生のニーズに対応できるよう工夫しています。
また、「出張キャリア相談」という企画を、始めようとしています。学生のニーズを調査する一環で、外部イベントの合同説明会に、初めて大学として就活相談ブースを出しました。学生は企業の説明を聞くために参加しているため、私たちのブースにはほぼ来ないだろうと思っていましたが、実際にはひっきりなしに相談に来てくれたんです。来てくれた学生を分析してみると、ほとんどがキャリアセンターを利用したことがない学生、もしくは一度利用した後に一定期間利用していない学生でした。学生がいる場所にこちらが出向いて、目線を合わせる。そうすれば利用しやすくなることがわかりました。そのため、サークルや部活動などから要望があれば、こちらから出向いていく支援を2022年11月からスタートさせました。部活動の部屋でも中央芝生でも学内であればどこでもいいよ、という形で進めています。外部イベント出展の様子②加工.jpg外部イベント出展の様子


小山:ゼミや授業ではない学生集団の場に行くのは新しい発想だと思います。企業側のニーズを受け、最近は体育会の学生を狙ってエージェントが付くなど、個別対応を強化する外部の就職支援サービスも増えてきました。もちろん良いエージェントさんもいますが、自社利益を重視するエージェントさんもいるので、注意喚起をしている一方で、それなら安心して利用できるキャリアセンターを利用して欲しいと感じます。


犬伏:学生にとって、キャリアセンターは「就活に困ったら最後に行くところ」という思い込みや、行きにくい、場所を知らないということが現実です。そのため、我々からの情報発信が届いていなかったと痛感しています。「イベントを開きますので来てください」といったこれまでのスタイルではなく、こちらから出向いて、学生の状況・ニーズをタイムリーに把握することが非常に大事ではないかなと考えています。
もう一つ、上ケ原キャンパスの正門前にある外部運営の就活拠点「知るカフェ」は、飲み物が無料で提供され学生がよく活用しています。今後は、そこにキャリアセンターのスタッフが出向いていき、相談に乗れるような仕組みを作れるように交渉しています。内定を獲得した4年生にも協力してもらい、知るカフェの2階を借り切って就活相談会を開催することも検討しています。これまで学内で開催していた企画を学外で開催することで、キャリアセンターのことをまず知ってもらうという取り組みにも、力を入れていきたいです。


小山:コロナ禍に入る半年ほど前から始めた「KGキャリアチャンネル」も新しい取り組みです。当時、就活のHow To動画が外部で出回るようになり、学生も日常的にスマホでYouTube等の動画を見るようになった状況を踏まえ、情報発信ツールの一つとしてスタートさせました。学生がキャリアセンターに直接来なくても就活準備を開始できるきっかけをつくりたいという思いもありました。
開始当初は、隙間時間に見てもらおうと、キャリアセンターが提供する支援内容や各キャンパスにおける場所を紹介する動画を手づくりで制作していました。その後、コロナ禍に突入したことで、セミナーやイベント等をオンデマンドやライブで配信する場として活用するようになり、有無を言わさず「KGキャリアチャンネル」が定着していきました。学校に来られない中でも、KGキャリアチャンネルやポータルサイトを通じて学生とつながっていけたのかなとも思っています。KGキャリアチャンネル.jpeg


村田:キャリア支援のデジタル化の動きとして、KGキャリアチャンネルのほかにも、より学生にとってメリットがある支援の提供をめざして、検討を進めているところです。
一方で、キャリアセンターがリーチできていない学生は一定数います。学外サービスの良し悪しを一つひとつ説明することはできないので、我々が第一にやるべきは、キャリアセンターのサービスを学生に正しく知ってもらうことです。特に、我々のサービスを十分に理解できていない学生に対しては、より着実に情報を届けていくことが必要です。その一つの方法としてDXがあると思っています。

フルオンデマンド型科目「KGキャリア入門」をフックにキャリア観を醸成


 石橋:キャリアセンターが提供するキャリア教育科目には、体系的に学び、自分なりのキャリア観を言語化してもらいたいというコンセプトがあります。導入科目の「KGキャリア入門」は、2022年度に新規開講したフルオンデマンド型科目です。14人の卒業生の姿から多様なキャリアがあることを身近に感じてもらいながら、自分なりにキャリアのイメージを描き、考えていく授業なのですが、予想に反して年間1.1万人を超える学生が履修してくれました。これまでキャリア教育に関心を示してくれなかった層もアクションを起こしてくれていますので、副次的な効果としてキャリアセンターの利用にもつながればと期待しています。KGキャリア入門.jpg



小山:「KGキャリア入門」は、オンデマンドでいつでもどこでも受講できるので、学生もハードルが低く感じるようです。シラバスを見ても興味深いですし、登壇してくださる卒業生も有名な方ばかりで、ミーハー心もくすぐられます。高校生が見ても響くだろうなというラインナップになっています。


村田:自分自身の大学生活を振り返っても、その後のキャリア形成やキャリアプランに影響を与えた出来事や言葉って、ものすごく些細なことだったり、ちょっとしたときに聞いた一言だったりするんですよね。「KGキャリア入門」においても、授業動画の中でふと頭に残った言葉がその後の進路決定に何らかの影響を与える可能性もある。100分×14回のどこかにフックがあると思うので、そういう機会を提供していることが、きっかけづくりの教育としては成功しているのではないかと考えています。村田③.jpg


國頭:私も視聴しましたが、ロールモデルを知るというか、自分のキャリアをイメージしやすくなるところは本当にいいと思いました。また、"Mastery for Service"という関西学院のスクールモットーを共通のキーワードとして、全登壇者が語ってくださっているので、本学がめざす人材育成に合致した形で教育効果の高いプログラムが提供されていると感じます。


小山:登壇くださった卒業生は立派な方ばかりですが、みなさん挫折した話もしてくださっています。みんながみんな最初からキラキラしているわけではないというところは、特に学生たちに感じて欲しいですね。


石橋:1年次の秋学期には「ライフデザインと仕事」という、3企業1自治体に3回ずつ授業をご担当いただき、企業の社会的役割や仕事のリアルを知ったうえで自分のキャリアや人生を考えようという授業を行っています。2022年度はPanasonic、ダイキン工業、村田製作所、神戸市役所に来ていただきました。さらに、2年生以上の学生向けには「キャリアゼミ」という、自分自身を深掘りしていく、ゼミ科目を開講しています。個別の科目で終わるわけではなく、カリキュラムとして体系的に学ぶ流れを定着させようとしています。
課題としては、「ライフデザインと仕事」の受講可能な人数は250名、「キャリアゼミ」は70名と少ない点です。対面の授業では、どうしても受講者数に限りが生じますので、オンデマンド化も含めて、今後のキャリア教育の在り方を考える必要があると思います。石橋④.jpg


村田:科目群として体系化への課題もありつつ、ハンズオン・ラーニング・プログラムの授業やキャリアセンターが提供するKG枠インターンシップにつなげるなど、つなげ方がフレキシブルなのもいいところだと思います。


小山:キャリア教育の各プログラムでは、参加することで何かしら得るものがあり、学生間の交流も広がるなど、利点がいっぱいあります。キャリアセンターがいつも1年生に向けて伝えているのが、「何かに取り組んでください」です。実際の学生相談でも「就職活動のために何をしたらいいですか」という質問が多いですが、就職活動のためと考えるのではなく、「どんなことでもいいのでまずは何かに挑戦してください」という話をしています。私はそれがキャリア形成の始まりであり、すべてだと思っています。
例えば、国際教育・協力センターが募集する「日本語パートナー」として留学生をサポートするボランティアに参加することで、留学生の友だちができて留学に行きたくなるかもしれませんし、学部の垣根を越えた学生交流で他学部のこんな授業を受けてみようとなるかもしれません。そうして世界は広がっていきますよね。世界が広がる経験によって主体性が高まり、次の一歩、さらにもう一歩となるので、なるべく早い時期に最初の一歩となる何かに取り組んでほしいですね。小山③.jpg



On Campusで企業との接点が持てて、ビジネスの視点が学べる「BiZCLASS


國頭:神戸三田キャンパスでは、主に理系学生のキャリア形成支援を目的とした「BiZCLASS」というプログラムを2021年度から実施しています。企業から講師をお招きした1コマ100分のワークショップでは、最初に企業説明等が行われた後、企業から何らかの課題が学生に与えられます。
例えばこの秋学期にJR西日本さんに実施いただいたテーマは、「新しい駅でのサービスを考えよう」でした。実際のビジネスの場面を想定した課題を出していただき、学生も興味津々に考えて新たなアイデアを発表していました。最後は講師から実現可能性も踏まえ、「このアイデアはこの点が浅い」「こう変えたらビジネス化、実用化が可能」といったフィードバックまで得られるので、学生にとって本当に良い機会になったと思います。BiZCLASS⑤.jpg
ほかにも製菓メーカーに来ていただいて「新商品開発」にチャレンジするワークショップを開催していただきました。学生ならではの柔軟な発想をもとに生み出された新たな種類のお菓子をはじめ、新商品のアイデアが学生たちから次々に出され、担当者の方から「このアイデアは使えそうなので持ち帰ってみます!」などと講評をいただき、学生たちも喜んでいました。神戸三田キャンパスは郊外型キャンパスであり、特に理系は研究に打ち込む学生も多いので、キャンパスにいながら企業との接点が持てて、ビジネスの視点を学べる「BiZCLASS」は、非常に有益な機会になっていると思います。


犬伏JR西日本をはじめ、学生がよく知っている企業の多くは、インターンシップに参加しようと思うと、実際はすごい倍率を勝ち抜かないといけません。関学の「BiZCLASS」では、スムーズにこれらの企業にタッチできるということは大きなメリットだと思います。


國頭:このプログラムは主に理系学生対象ですが、文系の総合政策学部生も多く参加しています。総合政策学部の学生がとても積極的で、ディスカッションもプレゼンも上手な学生が多く、そこに理系学生の視点からのアイデアが加わり、結果として分野横断の良い気づきと学びの場として展開されています。学生たちがしっかりとアイデア化したものを発表するので、企業の担当者の方もプレゼン力の高さに驚かれていました。
このプログラムには、JR西日本、花王グループ、Panasonicグループ、清水建設、ローム、帝人など、業界も幅広く、BtoCに限らずBtoB企業も多く参加くださっています。学生にとっては、参加するだけでキャリア観や将来の選択肢が広がるプログラムだと思います。BiZCLASS①.jpg



小山:最終進路を決めるとき、選択肢の中から「自分がなぜその選択肢に絞ったか」を明確に言語化できれば、就職活動は大概うまくいくと、これまでの支援経験から思うんです。後になってから「知らなかったので選択できなかった」とならないよう、選択肢を広げ、最終的に一つに絞る過程で必要な考える基盤を育む支援がキャリア教育では大切だと考えています。



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