今回は、情報化推進機構の職員4名に参加してもらい、関西学院のDXをテーマに座談会を開催しました。第1回では、情報化推進機構が開設された経緯を中心に、コロナ禍での変化について意見を交わしました。
情報化推進機構全体のマネジメントをはじめ、将来構想KGC2039の基盤計画に位置づけられている「情報化計画」の策定と推進を担当している。
主にICTインフラの整備を担当。また、利用者のICTの知識や関心の底上げをめざし、キャンパス内外を問わず講演などの発信を積極的に行っている。
学院のDXを担当。2024年度より、電話環境のクラウド化という大規模なプロジェクトを推進しており、企画・構築・運用までを行っている。
総合企画部から異動し、現在はLMS(Learning Management System)をはじめとした教学系システムの整備・構築・管理を担当している。
関西学院では、2039年を見据えた超長期ビジョンと長期戦略からなる将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」(KGC2039)を策定しています。本学院のありたい姿を描き、それを実現していくためには、教職員をはじめ、本学院関係者の強い繋がりが不可欠です。そこで、KGC2039で掲げる長期戦略から抽出したテーマをもとに、部署や業務、立場を越えて語り合う場を創出することで、相互理解を促し、想いを共有します。
将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」についてはこちら
今回のテーマは、2021年度より設置された情報化推進機構が取り組んでいる、関西学院のDXについてです。これらのプロジェクトに関わる情報化推進機構事務部の職員たちに、現在取り組んでいること、DX推進に向けた課題ややりがい、これからについて語り合ってもらいましたので、その様子を5回に渡ってご紹介します。
金本 関西学院には主に大学の情報環境を整備する「情報環境機構」という組織が2020年まで置かれていました。しかし、新型コロナウイルスの蔓延に伴い、社会状況が一変。教育や業務の現場では非接触などの新しい前提が求められるようになり、「ポストコロナを見据えて、教育、業務の変化に対して、関西学院としてどのように情報環境を整えていくべきか」という議論が進みました。それらと並行して、組織自体も変化をしなければならないという課題認識が生まれ、2021年に立ち上がったのが「情報化推進機構」です。
北島 まさに、コロナという大きな変化が組織を変えるタイミングになりましたね。
金本 そうですね。これまで、情報システムは「安心・安全で止まらないこと」を大前提とするあまり、安定性を重視しすぎていた側面があります。学校運営において安定性は絶対に欠かせません。かといって、挑戦をしなければ、学院や組織としての成長は見込めないでしょう。「守り」をしっかり固めた上で、次の段階として「攻めのDX」にも取り組まなければ、これからの学校運営において競争力を保つことは難しく、結果として受験生から選ばれなくなる可能性もあります。だからこそ、情報化推進機構として、DXをけん引していく必要があるのだと考えています。北島さんは、コロナ禍にICTインフラの構築に携わっていましたが、当時はどんな様子でしたか。
北島 それまで関西学院のインターネット環境は有線中心でしたから、何より非対面での仕事環境を整えることに大変苦労しました。また、先生方にリモート授業をしてもらう際に困ったのは、各人のICTスキルのばらつきです。ZoomやTeamsといったクラウドサービスは次々に機能が拡充して変わっていくため、画面が少し違うだけで混乱して問い合わせがくることもありました。
金本 北島さんの話を聞いていると、単にツールを導入するだけでは解決できない、大学ならではの難しさを感じますね。
宮脇 学生がいる組織である以上、外部サービスをそのまま契約して使えばすべて解決するというわけにはいきません。セキュリティを確保する必要があり、どの機能を使いどの機能を制限するのか、その判断が常に求められます。教職員から「便利なサービスがあるのに、なぜ使ってはいけないのか」と言われることもありますが、多くのクラウドサービスは企業向けに設計されており、大学の運用にそのまま当てはまらない部分も多いのです。
北島 企業向けのクラウドサービスは、利用企業の社内ユーザー同士での共有が標準になっているんですよね。しかし、大学という組織はそうはいかない。同じ組織内に、ある意味、お客さんである学生さんがいるわけです。教職員が意図せずすべての情報を学生さんに共有してしまったら、大問題になってしまいます。そこに、学校特有のリスクがあります。守りを固めすぎると使いにくくなる一方で、緩すぎればセキュリティインシデントにつながります。
金本 私は、こういった状況のことを、よく「企業は背中を壁につけて前を向いて仕事ができるが、大学や学校はステークホルダーにぐるりと周りを囲まれていて、背中を壁につけられない」と表現しています。大学では、利便性の高いサービスを提供する必要がある一方で、学生さんの大切な情報を守りながら適切に情報を共有する、セキュリティのバランスが重要です。こうした特殊性があるため、大学や学校の情報マネジメントは非常に難しいのです。
藤澤 コロナ禍の頃、私は大学図書館に所属していて、図書館司書として学生に学術情報を探索するための講座をする立場にいました。コロナ禍でリモート授業に切り替える際、これまでやってきた講座をどのように開催すべきかといったことを考えなければならず、先生方は大変だと思いながら準備をしていました。そのときに感じたのは、新しいツールの活用に慎重になる教職員は一定数いるのだということです。
金本 社会の変化に適応していかなければならなくなる一方で、変化に対して戸惑いを感じる反応も確かにありました。
藤澤 私は何でも「おもしろい」と思いながらやった方がいいと考えるタイプで、新しいものをどんどん取り入れるのが何より楽しいんですよね。ちょっとしたマインドの切り替えで生活が豊かになったり効率化して時間ができたりするのですが、そうした感覚は人によって受け取り方が異なるのだな、と感じています。
北島 学校の仕事は、圧倒的に正確性が求められるんですよね。だからなのか、丁寧に正確にやるのは得意でも、新しいことを始めるのは苦手に感じる職員が多い印象です。情報化推進機構は、藤澤さんのように新しく何かをはじめることを「おもしろい」と感じる人が集まったからこそ、当時の変化と噛み合い、関西学院のDXに向けて全員で前に踏み出すことができたのかもしれません。その結果として、インフラの整備などが進んでいったのだと思います。
宮脇 コロナ禍がもたらしたのは、必ずしもネガティブな変化だけではなかったということですよね。
金本 コロナ禍がDXへの機運を加速させたことは言うまでもありません。そして、今もアクセルとブレーキをバランスさせながら前に進み続けています。