関西学院のDXについて、それぞれの立場から語り合ってきた座談会。最終回となる第5回では、今後のめざすべき姿や、自分たちと“Mastery for Service”との関わりについて話してもらいました。
情報化推進機構全体のマネジメントをはじめ、将来構想KGC2039の基盤計画に位置づけられている「情報化計画」の策定と推進を担当している。
主にICTインフラの整備を担当。また、利用者のICTの知識や関心の底上げをめざし、キャンパス内外を問わず講演などの発信を積極的に行っている。
学院のDXを担当。2024年度より、電話環境のクラウド化という大規模なプロジェクトを推進しており、企画・構築・運用までを行っている。
総合企画部から異動し、現在はLMS(Learning Management System)をはじめとした教学系システムの整備・構築・管理を担当している。
関西学院では、2039年を見据えた超長期ビジョンと長期戦略からなる将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」(KGC2039)を策定しています。本学院のありたい姿を描き、それを実現していくためには、教職員をはじめ、本学院関係者の強い繋がりが不可欠です。そこで、KGC2039で掲げる長期戦略から抽出したテーマをもとに、部署や業務、立場を越えて語り合う場を創出することで、相互理解を促し、想いを共有します。
将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」についてはこちら
今回のテーマは、2021年度より設置された情報化推進機構が取り組んでいる、関西学院のDXについてです。これらのプロジェクトに関わる情報化推進機構事務部の職員たちに、現在取り組んでいること、DX推進に向けた課題ややりがい、これからについて語り合ってもらいましたので、その様子を5回に渡ってご紹介します。
金本 これまでにお話ししてきた取り組みは、2032年までを見据えた「情報化計画」に基づいて進めています。この計画のポイントは、施設などの「建設計画」と同じ考え方で全体を整理している点にあります。建物が数十年先を見越して建て替えや改修を計画するように、新規の取り組みだけではなく、基幹システムの維持・更新に必要な投資についても、2032年までの全体像を可視化しています。こうした長期的な土台を固めたうえで、直近3〜5年間は優先度の高い戦略的な施策を、状況に応じて柔軟に組み合わせながら進めていく方針です。
北島 2023年から取り組んできた情報基盤整備を経て、現在は次のステップとして各システム間をつないでいる連携の仕組みの刷新に注力しています。今後新しいツールを導入する際に、複雑な設定なしですぐにシステム間の連携ができるようになる見込みです。他にも、これまで紙や対面などアナログで行っていたID発行や本人確認の手続きが、すべてオンライン上で完結できるようになる予定で、いずれも2026年夏のお披露目をめざして取り組んでいます。
金本 こうした情報基盤の改善とは別に、今後3~5年で取り組む戦略的な施策は5つあります。
藤澤 1つは「Zoom Phone」ですね。
金本 はい。災害時や非常時の対策としても有効なシステムとして期待しています。2つ目は「リスクマネジメント」。これまで以上に、情報セキュリティについて外部の知見も取り入れながら評価を行い、脆弱性を把握した上で情報セキュリティ監査につなげていきます。3つ目は「人事系システムの再構築」です。現在、人事・給与・就業管理はそれぞれ別のシステムで動いており、連携が複雑で、いわゆるレガシーシステム化しています。大学や学校の場合、属性と権限の種類が企業よりもはるかに多く、その変更も頻繁にあり、それがさまざまな業務などと連携するので、最上流であるここをまず整流化しないと全体の改善にはつながらないとの判断です。
北島 手を入れるのが難しいがゆえに、協力会社を変えずに同じ仕組みを使い続けてきた部分ですよね。
金本 そうです。人事や財務は企業でいえば中核にあたる領域であり、学校には多様な職種の方々が存在するからこそ、ここを整理し直す必要があると判断しています。4つ目は「タスク管理・業務の可視化」です。当初はツールの導入も検討していましたが、ツールが増えることの負担や現場の状況を鑑みて、既存のツールでできるところからやっていく方向に切り替えています。5つ目は「ステークホルダーサポート」です。これは、問い合わせ対応をよりスムーズに行い、たらい回しが生じないような仕組みの構築です。今現在はZoom Phoneなどすでに導入したツールを使って、実際に上手く構築できないか検討している段階です。
藤澤 「情報化計画」に盛り込んでいる取り組みは、すべて現状をより良くするためのものです。私が学校法人に転職を決めたのは、学生さんたちが常に「今より良くなろう」と努力している、そんな循環に関わりたいと思ったからなんです。だからこそ、さらに良くするために努力し続けたいと思っています。
金本 最近の情報化推進機構は、コンサル的な要素も強く求められていると感じます。技術を理解し、協力会社と話ができるだけでは足りない。教員や学生、職員と向き合い、「どうすればより良くなるか」を一緒に考える力が必要です。そのためには、こちら側のコミュニケーション力や提案力も磨いていかなければならない。情報化推進機構は、そうした変化の真ん中にいる組織になってきています。
北島 私は、外部の講演会やウェビナー、事例紹介の場に呼ばれたら、積極的に出るようにしています。外部に向けて学内の取り組みを発信することで、評価や関心が還ってくる。それは、自分たちの仕事を褒めてもらいたいからではなく、関西学院の取り組みを未来につなげていくために必要な取り組みだと考えているからです。
宮脇 未来につなげていくというのは、情報化推進機構の魅力を伝え、この仕事をやりたいと思ってもらえるように、私たちも情報発信をしていかなければならないということですよね。その必要性は強く感じますね。
金本 そのためには感謝される存在であることも大切です。情報システム関連の仕事は昼間の運用業務に加えて、夜中や早朝、皆がシステムを利用していない時間帯に保守・メンテナンスをして、翌朝何事もなく使えている状態をつくること。裏方の要素が強いため、見えにくい仕事でもあります。それでも、そうした努力の積み重ねがあって、教育も研究も業務も下から支えることができている。見えにくい仕事を積極的に可視化して、応援してもらえる、「ありがとう」と言ってもらえる組織であるために、走り続けなければとあらためて感じています。
北島 情報系インフラは本当にたくさんの方々に支えられているので、その人たちの日々の頑張りを知ってもらえる社会になることを願っています。そういう方々のプレゼンスと価値を高められるような仕事をしていきたいです。
藤澤 関西学院のスクールモットー"Mastery for Service"は「奉仕のための練達」。自分が成長しないといい仕事はできませんから「この仕事は嫌だ」と思わずに、何にでも挑戦し、誰かのためになるものを生み出していきたいですね。私自身、かつて大学図書館に配属されたときには専門性を高めるため司書の資格を取得しました。現在の部署でも、ときには専門的で厳しい自己研鑽を要求されることもありますが、自分が学んだことが誰かの役に立つと考えると、やりがいがあります。
宮脇 私も、使ってもらえる仕組みをつくり、喜ばれることにやりがいを感じます。たとえば、外から見て「いい取り組み」に見えても、実際には学内で使われていないケースもあります。私たちの仕事は役に立ってこそ価値が生まれますから、常に利用者目線で仕事をしていくことが"Mastery for Service"につながっているのではないかと感じます。
金本 私は、二十代に情報系の仕事でかなりしんどい貴重な経験をしました。その教訓として「楽な道としんどい道があれば、しんどいほうを選ぶ」と決めています。難しい選択の先に、組織やメンバーの未来がより良くなる可能性があるなら、そちらを選ぶ。そのために足りない部分は勉強して自分を磨き、誰かの役に立つ。それが自分なりの"Mastery for Service"ですね。
北島 以前、商学部の周年冊子の制作に関わったときに、"Mastery for Service"についてある先生から話を聞く機会がありました。この言葉は「縁の下の力持ちを育てる」という意味で捉えられがちですが、実はそうではない。現場をよく知ったうえで、社会を変えていけるリーダーを育てる、そのための言葉なんだ、と。今、私たちがやっていることも同じです。システムを入れて終わりではなく、導入後にどう浸透させ、どう使ってもらうかが本当の仕事。学生さんや教職員に、「良くなったね」と言ってもらえる状態に変えていくことが大切だと思っています。そうした積み重ねが、関西学院で学びたい学生を増やし、働きたい人を増やす。それによって関西学院も変わっていくだろうし、ここで学んだ人が日本を、そして世界を変えていく......。そんな大きな循環の一部を担える存在であり続けることが目標です。