Challenge Stories
~私たちが未来のためにできること~

~SGUを経て、真のグローバルキャンパスへ~
2023.04.28公開

真の"Global University"の実現をめざして vol.04

関西学院大学の国際化を牽引した文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援」事業(SGU)も、2023年度末に10年の採択期間が終わりを迎えます。SGUは本学に何をもたらしたのか、またポストSGUに向けての課題と展望とは何か、国際連携機構事務部に所属する4名の職員たちが率直に語り合いました。

  • 国際連携機構事務部
    北川 雄基

    2018年入職。受入チームに所属し、交換留学生の受入のほか、国際教育寮(有光寮)及びレジデント・アシスタント(RA)担当として寮教育プログラムの検討・実施に携わる。大学時代に1年間、アメリカの大学での交換留学を経験。

  • 国際連携機構事務部
    姜 安娜

    2015年入職。法学部事務室を経て2018年、国際連携機構事務部へ異動。受入チームにおいて正規留学生の受け入れ体制の対応(入試、奨学金、在留管理、ビザ手配、キャリア支援)などを担当。コロナ禍では派遣チームにてオンラインプログラムの開発・広報を担当。親族や出身高校の影響で、異文化に親しみのある環境で育った。韓国籍。

  • 国際連携機構事務部
    田 偉辰

    2019年入職。教務チームで国際連携機構が提供する留学生と一般学生が融合する科目と国際交流制度の運営等に携わり、コロナ禍中から海外大学生と協働学習のCOIL型科目を開発。2022年4月より派遣チームで、短期語学留学プログラムを担当。中国籍。

  • 国際連携機構事務部
    星野 優

    2020年入職以来、派遣チームに所属。短期語学留学プログラム・交換留学担当を経て現在はCross-Cultural College (CCC)担当。コロナ禍で留学が叶わなかった学生を対象とした各種支援策の実施などに携わる。大学時代にアメリカとフィンランドの大学への交換留学を経験。

将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」(KGC2039)の実現には、教職員たちの強いつながりが不可欠です。KGC2039で掲げる長期戦略から抽出したテーマをもとに、部署や業務を横断して語り合う場を創出することで、教職員間の相互理解を促し、想いを共有します。


将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」についてはこちら


今回は、長期戦略の共通テーマとして全学が横断して取り組む『国際化』を牽引する国際連携機構事務部の4名の職員によるトークを5回に分けてお届けします。


『真の"Global University"の実現をめざして vol.03』はこちら


SGUが牽引した関西学院大学の国際化


 SGU採択を受け、留学派遣においても、留学生受入においても、設定されている明確な数値目標に向けて「学内全体で協力して達成しないといけない」という共通認識が生まれたことは本当に良かったと思います。SGU採択があったことで、国際化の推進は大学全体の目標となり、実際に派遣・受入ともに成果につながりました。
関西学院大学におけるSGU(文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援」事業)の取り組みについてはこちら
例えば留学においては、各学部の教務上の扱いが異なる中、半年や1年間の留学プログラムに参加しても4年間で卒業ができるように見直しが進められたり、各学部等において専門性・特色をいかした独自留学プログラムが数多く開発されました。留学生受入においても、正規留学生、交換学生、短期受入学生ともに増加し、キャンパス内での国際共修や交流機会も大きく増加しました。SGU採択を契機に「国際化が本学にとって重要であり、今後ますます大切になる」という認識が学内に広がったのは確かですし、「やらねばならないことである」という雰囲気も醸成されたように思います。
留学生受入②.jpg



星野
 明確な目標数値が提示され、大学全体の共通目標として取り組んできましたが、正直振り返る余裕を持つことが難しかったと思います。私たちCIEC(国際教育・協力センター)派遣チームでは、例えば交換留学の派遣において、「できるだけ多くの学生を留学させたい」という側面には注力できました。一方で、派遣先大学のマッチングの仕方がこれでいいのか、留学派遣前後に実施する事前事後研修の内容の精査などについて、もっとできたのではないかと いうのが現時点での振り返りです。SGU採択から採択期間を終える2023年度までは、数値目標に向かって邁進することが必要な時期でした。しかしこれからは、提供プログラムの「質」についても手をつけないといけないと考えています。
星野 (3).JPG



 留学広報を担当していた時、オープンキャンパスで、高校生と親御さんが「関学は留学に強い、留学に行きたいから関学に入りたいね」と話しているのを聞いたことがあります。このように、私たちの国際教育に対する努力が実ったと感じる印象的なシーンがいくつかありました。これらは、SGUの採択がなければ恐らく作り上げることが難しかったことだと思っています。
留学プログラム参加者の体験談はこちら
一方で、学生の海外派遣が拡大するにつれて、当然、手続業務が増え、様々なトラブルが生じる可能性も高まります。そういった部分での、業務委託の検討や危機管理の体制整備等が、教育業界は他の業界と比べて遅れていたのではと感じるところもありました。私たちが自転車操業的に身を削るまでして何とか対応できた部分もあります。ポストSGUにおいても、目の前の業務に精一杯で余裕がない状態では、学部プログラムのサポートにまで手が回りません。今後大学としてさらなる国際化を推進するために、外注化等による業務量削減を早急に検討した上で、私たちCIEC職員が業務経験で培った国際プログラムの企画や運営のノウハウを共有し、学部プログラムの運営支援ができる体制を整えることも必要じゃないかと感じています。
田 (3).JPG


 


ポストSGUに向けて- ポストSGUで目指すべきこと


 私たちは、学生の4年間の学びの支援を主に担っていますが、学生が卒業後にどのような動きをするか意識して、教育の支援に携わるべきだと考えています。在学中に海外留学を経験した学生、学内で異文化交流を経験した学生、外国人留学生として本学で学んだ学生が、卒業後、グローバルな感覚を持って社会の様々な場面に出ていくこと。そして置かれた場所で貢献することで、「関西学院はこういう世界市民を輩出するんだ」というある種のブランドを、社会に伝えていくことが必要だと思っています。世界でももちろん、変化を好まない日本社会において、国際感覚を持ってインパクトを与える存在になって欲しいです。
対談 (11).JPG


 SGUももちろん大事ですが、SGUの上には、本学の「KGC2039」と中期総合経営計画があり、そこでも国際化が重視されています。「KGC2039」の概念図では国際化がすべての計画に横断的に関わる共通テーマになっています。つまり、どの部署においても国際化を推進していくことが求められているのです。例えば、一見すると国際化と少し距離がありそうな施設部でも、グローバル基準の施設設計や、教室内で海外大学と直接繋げられるような設備の整備を進めるなど、それぞれの部署の人材が使命感を持ってグローバル化に取り組んでいくことで、グローバルキャンパスは実現していくのではないかと思います。
長期戦略の全体像.png
将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」についてはこちら



 少子化が急激に進む日本では、今後、学生確保のため大学毎の特長をより強く打ち出していくことが求められ、本学であれば、国際化がその一つになることは間違いありません。そのため、「内なる国際化=キャンパス内での国際交流」をさらに整備・推進する必要性を感じています。これらを実現するにはさらに多くの留学生の受入や支援体制が不可欠で、その重要性を学内関係者とも共有することが大事だと思います。
姜プロフィール(本文).jpg
また同時に、日本への留学に関心を持つ受験生や、その保証人に向けて、関学の魅力、日本に留学するメリットをより明確に打ち出し、入試広報を通じて伝えていくことも必要になります。そして今後最大の目標となるのは、在学生に向けて日本でのキャリア形成を視野に入れてもらえるよう、大学全体で促進することや、学修意欲を高め続けられるメリット型の奨学金制度を整備することだと思います。このような取り組みは、本学だけでなく、今後の日本社会においても意義のある働きに繋がると思います。優秀な留学生をさらに受け入れていこうという本学の姿勢を、具体的な支援や仕組みとして示すことができてようやく真のグローバルキャンパスの実現が進んでいくと考えています。


星野 留学プログラムにおいては、例えば国際ボランティアはスクールモットー"Mastery for Service"を体現したプログラムとして打ち出しています。しかし他のプログラムでも、さらにスクールモットーの反映をアピールできるのではないかと考えています。関学ならではの特色といえば、やはり"Mastery for Service"の精神であり、卒業生もそのことを意識していると思います。この関学の特長を強く打ち出した、つまりプログラムとスクールモットーに密接な繋がりを持たせた「関学ならではの留学プログラム」を作りたいと思っています。そして、それを上手く広報する術も考えていきたいと思っています。




北川
 実際のところ、SGUでは各プログラムにおける量的拡大に重きが置かれていたので、質の向上については、今後さらに取り組む余地があると認識しています。CIECとして、どのようにプログラムの質を向上させ、その質を保証するためにプログラム参加学生の達成度評価をどのように行っていくのかがすごく大切になってくると思います。これまでも達成度の評価については、試行錯誤しながら進めてきましたが、達成度を可視化することは非常に難しい課題です。単に外部テストで一面だけを測って終わり、という訳にはいきません。今後は、独自に評価方法を開発するか、もしくは既存の方法で私たちが望む形にフィットするものを探すという作業が必要になります。評価方法や基準を確立できれば、プログラムの見直しや改善もやりやすくなるはずです。プログラムの質をどのように測り、どのように質を高めるのかは、CIECだけでなく、大学全体で検討・実施していくべきテーマだと思うので、各部署、学部・研究科との連携がこれまで以上に大切になると考えています。
対談 (10)姜・北川.jpg
さらに言うと、プログラムの質向上とともに、学んだ学生の質を保証することができれば、「留学プログラムのブランド化」という境地に到達できると思うので、あらためて「関学ではこんな魅力的な留学プログラムを提供しているのでぜひ来てください」と言えるのではないでしょうか。



 グローバルキャンパスの実現は、単なる学生の受入・派遣ではなく、全学的な一つの循環サイクルとして捉えることが必要だと思っています。例えば、留学生受入に力を入れて、優秀な学生を確保できるようになれば、必然的に各学部において、さらに質の高い留学生の定員割合を増やしていこうと考える可能性があります。そして留学生の比重が増えれば、留学生に適したカリキュラム、例えば英語開講の科目増加などの必要性が高まります。そうなると、学内施設、クラブやサークルでも、従来のいわゆる日本式の部活動から、国際的なクラブに形を変えざるを得なくなります。そういう好循環サイクルができあがれば、留学生、日本人学生ともに質の高い学生が本学に集まり、真のグローバルキャンパスが形成されていくのではないでしょうか。
留学生交流③.jpg


星野 そうですね。海外への送り出しの部分、例えば留学派遣学生数は目に見えて成果が分かりやすいですが、今の日本においては、留学生の受け入れの大切さについてあまり浸透していないと感じます。とにかく国際化といえば海外派遣に偏りがちですが、本日いろいろお話してきた中で、真のグローバルキャンパスの実現には、たくさんの留学生が学内にいることがとても重要で、それが関学生にとっての国際化の第一歩、留学に意識が向かう第一歩になるのかなということを再認識しました。


 留学生と日本人学生の出会いの創出に、より注力しないといけないのかもしれないですね。現在も様々なイベントや機会を設定していますが、そこに巻き込めていない日本人学生もたくさんいるので、さらに出会いの機会を創らないといけないように思います。2023年春にリニューアルしたフジタ・グローバルラウンジも、今後拠点としてさらに活用していきたいですね。
ラウンジ.jpg
国際交流に関する学内施設についてはこちら


 そういう意味ではカリキュラムもすごく大事ですね。本学の国際学部は留学が必須で、英語開講科目が多くありますが、そのようなカリキュラムを他の学部にどのように導入するのか、といったところです。日本では文部科学省主導でオンライン国際教育プラットフォーム「JV-CampusJapan Virtual Campus)」が整備され、日本の各大学における優れたデジタルコンテンツを集めて国内外に発信し、世界中の学生がオンラインで学ぶ環境を提供するプロジェクトがあります。海外各国でも同様の取り組みが進められているので、例えば、所属学部のカリキュラムの一環として、海外大学の専門授業をまずはオンラインで学び、さらに関心が高まれば同じ分野のより高度な専門授業を現地で直接受けるために留学する、というように、海外のデジタルコンテンツの活用とその後の留学をカリキュラムに落とし込む仕組みが開発できればすごくよいのではないかなと思います。


「vol.05~本音で語り合ったことで見えた将来像~ 」へ


関西学院大学の国際交流・国際教育プログラムについてはこちら