Challenge Stories
~私たちが未来のためにできること~

~「Kwansei Gakuin STARTUP ACADEMY」のさらなる充実に向けて~
2024.04.30公開

関西学院がめざすアントレプレナーシップ教育と起業支援vol.03

第3回は「Kwansei Gakuin STARTUP ACADEMY」の課題と今後の展望について、意見を出し合いました。

  • 国際学部 教授
    木本 圭一

    研究分野は、人文・社会/会計学。2014年から2016年まで社会連携センター長、2017年より社会連携コーディネーター(現在まで)を務める。関西学院のアントレプレナーシップ教育の立ち上げから関わり、現在は「ベンチャービジネス創成」を担当。

  • 研究推進社会連携機構 社会連携・インキュベーション推進センター
    佐野 芳枝

    関西学院大学経済学部卒業。金融機関の法人営業など、複数企業を経て入職。関西学院のアントレプレナーシップ教育全体のコーディネート、各種プログラムの企画運営を担当。正課授業の院内講師も務める。

  • 卒業生・講師
    松本 修平

    関西学院大学商学部卒業。慶應義塾大学特任助教(2024年6月より名古屋大学特任准教授)。幼少期から関学卒業までに複数事業を創業。監査法人トーマツ等を経て、現在は京都大学大学院博士課程にて起業家教育の研究に従事。関学では正課授業に加え、起業を志す学生へのフォロープログラムを担当。

  • 卒業生・起業家
    濱田 祐太

    関西学院大学法学部卒業。株式会社ローカルフラッグ代表取締役社長。学生時代に「イノベーションと起業家精神」を受講。在学中に起業し、京都府与謝野町で地域資源を生かしたクラフトビール事業等を展開。Kwansei Gakuin STARTUP ACADEMYメンター。ベンチャー新月会にも所属。

  • 社会起業学科 3年生・起業家
    小菅 優衣

    関西学院大学人間福祉学部社会起業学科3年生。株式会社Bestieat代表取締役。1年生の夏より関西学院のアントレプレナーシップ教育関連プログラムを複数受講。並行して神戸にあるパン屋のロスパンを2次流通させる事業「あすぱん」をはじめ、2023年11月に法人化する。

関西学院では、2039年を見据えた超長期ビジョンと長期戦略からなる将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」(KGC2039)を策定しています。本学院のありたい姿を描き、それを実現していくためには、教職員をはじめ、本学院関係者の強い繋がりが不可欠です。そこで、KGC2039で掲げる長期戦略から抽出したテーマをもとに、部署や業務、立場を越えて語り合う場を創出することで、相互理解を促し、想いを共有します。


 将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」についてはこちら


関西学院大学では、2016年秋より「IPOアントレプレナー100⼈創出プロジェクト」を掲げ、アントレプレナーシップ教育と起業支援に取り組んでいます。今回、これらの教育と支援に取り組む教職員及び卒業生講師、さらに起業家として活躍する在学生・卒業生に参加してもらい、関西学院の起業家育成の取組状況や特長、今後の課題について意見を交わしました。5回に分けてお届けします。


『関西学院がめざすアントレプレナーシップ教育と起業支援vol.02』はこちら

KGスタートアップアカデミーの今後の展望


佐野 小菅さんがKGスタートアップアカデミー(Kwansei Gakuin STARTUP ACADEMY)に参加していた期は、小菅さんが中心になってみんなに声をかけてくれていたので、自然とコミュニティができていました。ですが、学生任せではどうしても期によって濃淡が出てきてしまうこともあり、コミュニティづくりの支援が必要であると感じています。


また、プログラム終了直後は持っていた起業への志も、その後何もしないままでいると立ち消えてしまうことがあります。コミュニティ化支援と合わせて、修了生たちが「次に何かをやりたい」と思った時にすぐ相談ができる体制を、社会連携センター(2024年4月~社会連携・インキュベーション推進センター)として整えないといけないと感じています。


ただ、次に取り組みたいことが留学かもしれないですし、起業だけが次の道ではない中で、どのような支援をしていくかが課題です。厳しいプログラムを乗り越え、実力も身についた修了生たちですので、何もしないのはもったいないと思っています。


木本 私の課題意識として、小菅さんのように、高校生の時に色々な話を聞いて既に起業について考えていて、1年生からKGスタートアップアカデミーに取り組む学生が増えてくるとしたら、現在2年生から受講が可能となる「ベンチャービジネス創成」のような授業を、1年生から学べる環境が必要だという気がしています。


当初はもう少し緩やかにステップアップすることを想定していましたが、みなさんとお話をして実際の様子を聞いていると、KGスタートアップアカデミーの前に、緩衝材となる機会を入れるなど、全体像を見直した方が良さそうですね。


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松本 私も同感でして、KGスタートアップアカデミーでいきなり"ブートキャンプ"のような実践プログラムを行う前に、もう少し準備運動をしてもいいんじゃないかと思っています。KGスタートアップアカデミーの定員40名の受講生が最終的には10名程にまで減ってしまうという現状からも、もう少し基礎訓練、基礎運動をすることで、やり遂げられる受講生が増えるのではないかと思うのです。


木本 小菅さんや濱田さんのように、若い頃から起業するという志があって、学生で起業する場合は、「事業化に成功して会社を立ち上げる」ところまでいかなくても、その事業自体を面白いと思って取り組む、ということだけでもいいかなと思います。学生だからこそ、万一事業が成功しなくても、その経験を「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」として就職活動でPRすればいい。もちろん上手くいけば、その事業をスケールアップして起業してもいい。選択肢は多様です。


卒業生の起業支援もしていく必要があると考えていますが、現役学生への起業支援は「それが人生の糧になる」「教育効果がある」という意味においても重要だと思っています。


また本学には、学生起業を後押しするサポーターもメンターも多くいますし、卒業生からもサポートしてもらいやすい環境が整っています。社会人になってから起業することと比べると、学生時代であれば低いリスクでチャレンジできる状況なので、学生をもっとエンカレッジして、起業家育成を進めたいと思っています。


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濱田 起業したい学生が利用できる外部プログラムも実はたくさんあります。私は、学生だった当時、学外のNPO法人が提供するプログラムに参加し、それがとても参考になって起業するに至りました。学外にもさまざまなプログラムがある一方で、大学が提供する起業支援には、大学オフィシャルだからこその良さとして、"特定の色がついていない"起業支援であるという点が大きいと思っています。というのも、外部プログラムだと主催者や後援者がいて、提供側の意図がどうしてもあるわけです。それによって、事業ジャンルが絞られるなど、何かしらの制約が生まれがちです。一方で、大学の、少なくとも関学のプログラムの主目的は「学生や卒業生が社会に貢献できる人になること」だと思いますので、起業のジャンル、規模、進め方などを含め、型にとらわれず自由にチャレンジすることができ、それを大学を挙げて応援してくれているんですよね。さまざまなチャレンジが雑多に混ざり合っていきながら、「みんなで応援されて、お互いに成長していく」という在り方は、関学だからこそ打ち出せるポイントなのではないでしょうか。


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木本 私も損得や利害、思惑がないというのが関学のプログラムの最大の特長だと思います。加えて、関わってくださっているIPO社長のみなさんも、学生の成長を支援したいという一心で、「自分の何かにつなげよう」などという思惑では関わってはおられません。ですから、濱田さんがおっしゃるような側面はおおいにあると思います。


小菅 KGスタートアップアカデミーにおいて事業に挑戦するのは学生なので、「学生目線のビジネス」を思いつく学生が当然多いです。例えば、教科書を安く販売するという事業を展開しようとした時、一番近い顧客は関学生になるわけですが、学内での営業やチラシ配りができないというルールがあり、そこにジレンマを感じている受講生もいました。私もプログラムを受けていたとき、「せめて事業モデルの検証で、現役関学生を巻き込めたらいいのに」と思ったことがありました。


佐野 小菅さんの気持ちはよくわかります。ですが、関学生だから、KGスタートアップアカデミーの受講生だから、という看板を一切使わずに事業モデルを実現することが本当の実力になるのではないかと考えていて、このプログラムでは学内での営業行為をすべて禁止にしています。「厳しい」といつも言われますけど、それも含めて、このプログラムの魅力であり、特長なのだと思いますね。


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社会連携・インキュベーション推進センターHP


「Kwansei Gakuin STARTUP ACADEMY」はこちら


Vol.4 ~"フォローアッププログラムによる支え"が学生を後押し~